「英単語が覚えられない…」
「歴史の年号や人物が頭に入らない…」
こういった悩みは、“勉強あるある”ですよね。
私自身も、いつも暗記には苦戦しています。
最終的には何度も復習することが最適解だとしても、できるだけ早く、効率的に覚えたいですよね。
そこで、この悩みを解消するべく、前回の記事で紹介したAIを使った記憶術のひとつ「ストーリーテリング」を実践してみました。
ChatGPTに実際に指示を出しながら、英単語や歴史用語を“物語”にして覚える方法を検証したので、
「暗記をはかどらせたい」
「丸暗記じゃなくて、意味をちゃんと理解したい」
という方は、ぜひ最後まで読んでみてください!
手軽に使えるAIをサポーターとして、あなたの記憶を助ける“語り手”になってもらいましょう。
はじめに|ストーリーテリング記憶術の復習
なぜ物語にすると覚えやすいのか?
人間の脳は、単なる情報の羅列よりも「流れのある話」を記憶しやすい性質があります。
登場人物、出来事、感情、場面——こうした要素が組み合わさった物語は、脳にとって“意味のある情報”として処理され、記憶に残りやすくなるのです。
これは、心理学でも「意味記憶」と呼ばれる現象で、単語や数字よりも“意味のある文脈”の方が長期記憶に定着しやすいことが知られています。
たとえば、「1789年にフランス革命が起きた」と覚えるよりも、 「1789年、パン職人の私は税の重さに耐えかねて、仲間とともにバスティーユ牢獄へ向かった」 という物語の方が、記憶に残りやすいのです。
前回記事の振り返り
前回の「AIに聞いてみた!」シリーズ第2回では、記憶術の基本と、AIを使った実践方法を紹介しました。
特に、連想法・ストーリーテリング・間隔反復という3つの記憶術が、ChatGPTやNotion AIなどのツールと相性が良いことを解説しました。
今回はその中でも、「ストーリーテリング」に焦点を当てて、実際にChatGPTを使って英単語や歴史用語を物語化する方法を試してみます。
「AIに聞いてみた!」シリーズについて
このシリーズでは、AIを活用して勉強に役立つ情報を探りながら、実際に使ってみた感想や活用法を紹介していきます。
実践①|英単語を物語にして覚える
英単語を丸暗記しようとすると、どうしても「スペルと意味」だけの記憶になりがちです。
でも、物語の中で使われると、その単語が「どんな場面で使われるか」「どんな感情と結びつくか」を自然に理解できるようになります。
今回は例として、単語「justice(正義)」を覚えるための物語をChatGPTに作ってもらいました。
ChatGPTに頼んでみた例
最初にChatGPTに出した指示はこんな感じ。
英単語 'justice' を使った短い物語を、私を主人公として作ってください。
最初にあらすじを入れて、「事件の犯人として疑われた友人を助ける」ようなストーリーがいいです。
’justice' の部分だけは英単語にして、それ以外は日本語で作ってください。
この指示で実際に生成された物語はこちらです。
あらすじ
ある日、私の親友・遥が窃盗事件の容疑者として警察に連行される。
証拠は曖昧で、遥は無実を訴えるが、周囲の目は冷たい。
私は「justice」を信じ、真実を明らかにするために自ら調査を始める。
友情と信念を武器に、私は事件の闇に立ち向かう。
物語:『justiceの名のもとに』街に冷たい雨が降るある午後、私は警察署の前で立ち尽くしていた。
親友の遥が、駅前の宝石店で起きた窃盗事件の容疑者として逮捕されたのだ。「遥がそんなことするはずない…!」
私は、遥が事件当時に別の場所にいたことを知っていた。
だが、監視カメラの映像には遥に似た人物が映っており、警察はそれを決定的な証拠としていた。私は自ら調査を始めた。
映像を何度も見返し、現場周辺の聞き込みを行い、ついには決定的な手がかりを掴む。
映像に映っていた人物は、遥の元同級生で、遥に恨みを持っていた人物だった。
彼は遥に似せた服装で犯行に及び、遥に罪をなすりつけようとしていたのだ。私はその証拠を警察に提出し、遥の無実が証明された。
「ありがとう、私を信じてくれて。」
遥の目には涙が浮かんでいた。
私は微笑みながら答えた。
「私はただ、justice を信じただけ。」
英単語の部分はどうしても違和感を感じてしまいますが、'justice' の雰囲気は感じ取れる物語になりました。
ただ、もう少し簡潔で印象的な物語にしてほしかったので、
この話をもっと面白く、もっと短くできますか?
と追加で聞いてみました。
できた物語はこちらです。
ショートストーリー:『justiceの直感』
「遥が犯人?ありえない。」
親友が窃盗容疑で捕まったと聞いた瞬間、私の頭はフル回転した。
監視カメラには遥に似た人物。
だが、私は気づいた——その人物は左利き。遥は右利き。私は現場に急行し、証拠映像を解析。
犯人は遥の元同級生、復讐目的で遥に似せた格好をしていた。警察に証拠を突きつけ、遥は釈放。
「どうして信じてくれたの?」と遥。
私は微笑んで答えた。
「justiceって、直感から始まるの。」
こんな感じで、一回目よりわかりやすい物語になりました。
今回は「justice」を英単語のまま使うように指示しましたが、セリフの違和感が大きいので、「英単語の部分は日本語にして、強調するだけにしてください」と追加で指示をしたら、もう少し自然な文章に仕上がりました。
ChatGPTへの指示出しに慣れないうちは違和感のある文章になることもありますが、単語の意味やイメージを掴むには十分な物語が作れます。
自分が主人公になると、さらに覚えやすい
物語の中で「自分が正義を守るヒーローになる」と想像すると、単語の印象はさらに強くなります。
脳は“自分ごと”として捉えた情報を優先的に記憶するため、英単語も「自分の体験」として覚えることができるのです。
👉登場人物の名前もリアルな知り合いにしてみると、より自分事になっていいかもしれません。
ChatGPTで調整するコツ
- 「もっと短く」「もっと面白く」と指示すると、わかりやすくて印象的なストーリーに変えられる
- 「自分が主人公の話にして」と頼むと、記憶への定着がさらに高まる
- ストーリーの方向性を指示して、好みの展開にする
ChatGPTが作る物語は、指示によって結構変わります。
まずは簡単な指示で物語を作ってみて、好みに合わなかったら追加で指示を出してみると、より記憶しやすい自分向けの物語を作れます。
実践②|歴史用語を物語にして覚える
次は歴史用語をChatGPTに物語にしてもらいます。
歴史の勉強では、どうしても「年号と出来事」を丸暗記しがちですが、それだけではすぐに忘れてしまいます。
ですが、歴史を 物語の中で“体験”すると、出来事が「感情」と結びつき、記憶に残りやすくなるのです。
今回は「フランス革命」を例として、簡単な物語を作ってもらいました。
ChatGPTに頼んでみた例
まずは、ChatGPTにこのような指示で物語の作成を頼んでみました。
フランス革命を、私が主人公の物語として説明してください。
主人公の私が革命に巻き込まれる話にしてください。
年号や人物も入れて、できれば最初にあらすじをつけてください。
実際に生成された物語はこちらです。
あらすじ
1789年、フランス。王政の崩壊が始まり、民衆の怒りが爆発する。
私はパリで仕立て屋として働く平凡な市民だったが、ある日、偶然にも革命派の秘密文書を預かることになり、運命が大きく動き出す。
王党派、革命派、そして混乱する民衆の間で、私は生き延びるために選択を迫られる。
物語:『縫い目の向こうに』1789年6月、三部会が招集され、空気が変わり始めていた。
私はパリの裏通りで小さな仕立て屋を営んでいた。
客の一人が、厚手のコートの裏地に何かを縫い込んでほしいと頼んできた。
その夜、好奇心に負けて裏地を開くと、そこには「国民議会設立」の草案が隠されていた。7月14日、バスティーユ襲撃。街は騒然とし、私の店にも革命派が押し寄せた。
「その文書を見たな?君はもう傍観者じゃない。」私は選択を迫られた。文書を渡して革命に加担するか、沈黙して王党派に通報するか。
だが、どちらを選んでも、もはや私はただの仕立て屋ではいられなかった。1792年、王政が廃止され、共和国が誕生。
私は革命派の制服を縫う仕事を続けながら、ただ静かに時代の流れを見つめていた。
物語としては成立している感じがしますが、主人公が傍観者すぎてフランス革命の核心がわかりづらいですね。
これを踏まえて、次は追加で下のような指示を出してみました。
主人公の私も革命側の一員としてください。
フランス革命はなぜ起こったのか、誰が何をしたのか、その後どうなったのか、どんな意義があったのかがわかるような物語にしてください。
作成された物語はこちらです。
あらすじ
1789年、フランス。王政による重税と貴族の特権に苦しむ民衆の怒りが爆発する。
私はパリの印刷職人。思想家たちの言葉に心を動かされ、革命派の一員として地下でパンフレットを印刷し、民衆を鼓舞していた。
やがて革命は暴力と混乱を伴いながら進み、王政は崩壊。
だが私はその中で、自由と平等の本当の意味を問い続けることになる。
物語:『印刷機の下で』1788年、冬。パンは高く、暖炉の薪も尽きた。
私はパリの印刷所で働いていた。ある日、ジャン=ポール・マラーの原稿が届いた。
「人は生まれながらにして自由である」——その言葉に胸が熱くなった。1789年、三部会が招集され、民衆の不満が爆発。
私は仲間とともに「人権宣言」を印刷し、夜の街に配った。
7月14日、バスティーユ襲撃。
私は群衆の中で叫んだ。「王政を終わらせろ!」1791年、ルイ16世が逃亡を図るも失敗。
私は印刷所で「国王は民の敵」と刷り続けた。
1793年、国王処刑。広場の血の匂いの中で、私は思った——これが自由の代償なのか。その後、ロベスピエールの恐怖政治が始まり、仲間の何人かが粛清された。 私は印刷機の前で手を止めた。革命は、理想だけでは動かない。
1799年、ナポレオンが台頭。革命は終わり、新たな秩序が始まった。
今度は物語性が薄くて、固い表現の文章になってしまったので、ダメ押しでもう一度追加の指示を出してみました。
事実の列挙という印象が強くて、ドラマ性が薄いので、もう少し物語っぽく、やわらかい表現を使ってください。 革命の意義も物語中でわかるようにしてください。
完成した物語はこちらです。
物語:『風が変わる音』
1788年の冬、パリの空は重く、パンの値段は空より高かった。 私は印刷所で働く若者。インクの匂いと紙の手触りに囲まれながら、密かに配られるパンフレットに目を通していた。そこには、ロベスピエールやミラボーの名があり、「人は生まれながらにして自由である」と書かれていた。
「こんな言葉が、街を変えるのか?」
翌年、1789年。三部会が招集され、民衆の不満が噴き出した。私は仲間とともに、夜の街角にビラを貼り、広場で声を上げた。 そして7月14日、バスティーユが崩れた。石と怒りと希望が混ざったあの日、私は群衆の中にいた。
「王がすべてを決める時代は、終わるんだ。」
1791年、ルイ16世が逃亡を図るも失敗。私は印刷所で「国民こそが主権者」と刷り続けた。 1792年、王政は廃止され、共和国が誕生。 1793年、国王は処刑された。広場のざわめきの中で、私は震える手で帽子を握りしめていた。
「これが、自由の重さか…」
だが革命は理想だけでは進まなかった。ロベスピエールによる恐怖政治が始まり、仲間が次々と消えていった。 私は印刷機の前で、ふと手を止めた。 「自由も平等も、叫ぶだけじゃ届かない。守るには、知恵と覚悟がいる。」1799年、ナポレオンが台頭し、革命は一つの終わりを迎えた。 けれど、あの頃の言葉は、今も紙の中で生きている。
「人は生まれながらにして自由である」 私はその一文を、最後の一枚にそっと刷った。
結構よくなったのではないでしょうか。
まだ改善の余地はありますが、フランス革命がどういうものだったかを思い出すトリガーにするには十分な気がします。
ChatGPTで調整するコツ
上記の実践を踏まえると、ChatGPTの指示出しのコツは以下のようになります。
- 「○○の歴史を、私が主人公の物語にして」と指示する
- 立場を指定すると、物語にリアリティが出る
- 「やわらかい表現にして」と追加指示すると、わかりやすくなる
- 物語が長すぎる場合は「もっと短く」「印象的にして」と調整する
細かく指示を追加すれば徐々に納得のいく物語にはなると思いますが、完成度にこだわりすぎると時間がかかってしまうので、「歴史の流れが思い出せる」程度で済ませることをおすすめします。
応用編|自分で物語を作るコツ
上記で実践した内容から、ChatGPTに作ってもらった物語を「自分好みに調整する」ことで、さらに記憶しやすい物語にできることがわかりました。
ChatGPTは、指示次第で物語の雰囲気や長さ、登場人物の立場まで自由に変えられます。
下記では、実践をふまえた指示出しのコツをまとめて紹介します。
ChatGPTへの指示の工夫
「もっと短く」「もっと面白く」と伝える
物語が長すぎると読むのが大変ですし、印象がぼやけてしまいます。
最初に作ってもらった物語がわかりづらい場合、「もっと短く」「もっと面白く」と伝えると、要点が凝縮されたわかりやすいストーリーになります。
👉「この話をもっと短く、もっと面白くできますか? 」
→ 印象的でテンポの良い物語に変わることが多いです。
「自分が主人公の話にして」と頼む
自分が登場人物になると、記憶への定着がぐっと高まります。
脳は“自分ごと”として捉えた情報を優先的に覚えるからです。
👉「この歴史の話を、私が主人公の物語にしてください。」
→物語の世界観への没入感が高まり、年号や人物も思い出しやすくなります。
「やわらかい表現にして」と伝える
ChatGPTが作る文章は、初期状態だとやや硬めになることがあります。
そんなときは「やわらかく」「物語っぽく」と伝えると、感情に訴える表現に変わります。
👉「もう少し物語っぽく、やわらかい表現にしてください。」
→ 読みやすく、印象に残る文章になります。
「自分の好きな要素を入れて」と頼む
自分の好きなことや展開を物語に入れると、さらに記憶に残りやすくなります。
たとえば「料理が好き」なら、主人公を料理人にしてみるのもおすすめです。
👉「この英単語を使った物語を、料理人の私が主人公になるようにしてください。」
→ 「自分ごと」として覚えやすくなります。
無理に完成度を求めなくてOK
ChatGPTは何度でも調整できますが、完璧な物語を目指すと時間がかかってしまいます。
そのため、物語は 「記憶のトリガーになる」程度で十分です。
完璧さよりも、“自分の言葉で思い出せる”かどうかを大切にしましょう。
まとめ|物語で記憶は変わる
英単語も歴史用語も、ただ覚えるだけだと長期記憶はしづらいです。
でも、物語の中で“自分が体験する”ように覚えることで、記憶の定着率は驚くほど高まります。
今回、ChatGPTを使って物語を作ってみたことで、以下のような気づきがありました。
- 単語や年号が「物語」と結びつくと、自然に思い出せる
- 自分が主人公になると、記憶が“自分ごと”になる
- 指示を工夫すれば、物語の雰囲気や長さも自由に調整できる
- 完璧な物語でなくても、「思い出すきっかけ」になれば十分
実際に試してみて、ただ言葉を暗記するよりも覚えやすくて印象に残ったなと思います。
ChatGPTへの指示出しは面倒なこともありますが、指示を追加する過程も復習になるので、どうしても覚えられない英単語や歴史用語がある場合は、これからも使用していきたいです。
本記事では、AI × 暗記術の実践編として、ChatGPTを使った「ストーリーテリング」を試しました。
英単語や歴史用語を覚える様々な方法の中で、記憶の仕方に困ったときの手段の一つとして、ChatGPTで物語を作ることもよければ試してみてください!